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さて、今回のテーマは「人材育成」です。

どんな組織においても、人材育成が重要であることに異論はないと思います。
しかし、そのために必要な「指導力」という能力を正確に測るのは、なかなか難しいと感じます。

たとえば、競馬の世界ではよくこう言われます。
“レースの結果に与える影響は、騎手が3割、馬が7割。”

つまり、勝負の大部分は馬の実力次第ということです。 駄馬に乗った名騎手よりも、名馬に乗った下手な騎手が勝つということになります。

だからこそ、1レースだけの結果を見て騎手の実力を判断するのは難しいです。
しかし、何度もレースを重ねていくうちに、騎手が担う「3割」の影響がトータルで表れてきます。

その結果を長期的に分析すれば、騎手としての実力が少しずつ浮かび上がってくるのです。

もちろん、優れた結果を出す騎手ほど名馬に乗る機会が増え、良い循環が生まれるという側面もあります。
そのため、純粋な実力とは言えない部分もあるかもしれません。

しかし、それを含めて「実力」と捉えるのが自然だと私は考えています。

さて、ここからが本題です。

これを人材育成に置き換えると、会社における指導力も、競走馬と騎手の関係に似ているのではないかと思います。

やはり、指導力よりもメンバー個々の資質が成果に大きく影響します。

例えば、「指導力のない上司」の下でも、資質の高いメンバーは自ら成長し、成果を生み出します。
逆に、「指導力のある上司 」がいたとしても、メンバーの資質が乏しければ、大きな成果には結びつきません。

こうした背景があるからこそ、指導力は他のスキルに比べて測定が難しいのです。
その結果、本来は改善が必要な状況でも、それを成功体験のように勘違いしてしまうケースが少なくありません。

例えば、あるマネージャーがメンバーに対してマイナスの影響を与えるような指導をしたとしても、仕事の成果がマイナスになるとは限りません。

なぜなら、実際に成果を出すのはメンバー自身だからです。
そのため、マネージャーは自分の指導がうまくいっていると錯覚しがちです。 さらに、その指導が良かったのか悪かったのかを検証する機会がほとんどないのも問題です。

結果的に、振り返りや改善が行われないまま、非効率的な指導が続けられる。
こうした状況は珍しくありません。

これを避けるには、長期的な結果をしっかりと分析することが必要です。
その際、指導力の影響だけでなく、「もともと優秀なメンバーが自力で成長した可能性」も考慮しなければなりません。

2割くらいの人はもともと優秀だったと考えると、成功体験の2割くらいは割り引いて考える必要があるのかもしれません。

正直なところ、これらを完全に検証するのは非常に難しいです。
それでも、この曖昧さに甘えることなく、仮説を立てて検証を繰り返し、適切な分析を続けていくことが重要です。

そうした地道な努力が「指導力」を磨き、組織全体を良い方向に導く力になると私は思います。

長期的な視点で自分の指導を振り返り、より良い形に進化させていく。
より良いリーダーを目指して、日々精進してきたいと思います。

アイ・スマイル社会保険労務士法人
副代表 江崎智也
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